親知らず抜歯のコツ

院長の野上です。
前回に引き続き口腔外科についてお伝えさせていただきます。
今回は口腔外科の中でもとてもメジャーな親知らずの抜歯についてです。

まず親知らずってなに?

親知らず(おやしらず)
歯の一番奥に生える永久歯であり、先天的に生えない人、存在しても傾斜して生えない人も多い。 むし歯や炎症などトラブルがあれば抜歯するのが一般的である。 歯の一番奥に生える永久歯であり、智歯(ちし)や第三大臼歯とも呼ばれます。

親知らずを含めると、人間の永久歯は合計32本生えます。

英語ではa wisdom tooth。賢い歯?!ではありません。

wisdomとは「賢い、分別」という意味を持ちます。 親知らずが「物事の分別がつく年頃になってから生えてくる歯」であることに由来して命名されたらしいです。

現代の日本人では親知らずが生えてこないことがほとんどです。
諸説ありますが顎の骨が退化して小さくなり、歯が入るスペースがなくなったことが大きな要因と言われています。
スペースがないので真横になってしまう、出てきても粘膜が覆いかぶさり歯磨きができない状態で炎症を起こしてしまう、といった状況がほとんどです。

20歳~30歳くらいまでに歯科医院に行くと
「親知らずがありますね。歯列を乱す原因になるので抜きましょう。」
とか、
「智歯周囲炎(親知らずの歯周病)になっているので抜きましょう。」
ということを言われる方が多いと思います。

大学病院を紹介します。なんてことを言われた方も多いのではないでしょうか。

しかし、歯ってそんな安易に抜いていいのでしょうか。
答えはNoです。

親知らずは条件によりますが移植のドナーにもなることもありますし、場合によっては今後の再生医療に有効活用できる可能性を十分に秘めています。

とはいえ、リスクとベネフィットを天秤にかけた場合、ほとんどの方が抜歯によって得られる利益を優先されています(臨床22年間の経験上)。

以前診ていた患者さんで、『親が死ぬまでは親知らずは抜かない!』と炎症がひどい状態だったのにも関わらず頑なに抜くのを拒んだ患者さんがおりました。
結局感染が大きく広がり首の方まで膿が溜まってしまい入院して全身麻酔で気管挿管までされる事態になってしまいました。
それこそ江戸時代などであればこれが原因で命を落としていたでしょう。

実際、過去の文献にて「親知らずが原因で亡くなった方も多かった」という記述が多く残っています。

また、高齢になり上手に口腔管理ができない状態に陥った時のことを考えてみましょう。
炎症が強くなって抜かざるを得ない状況になったとしても、全身状態により抜歯処置自体を受けられないこともあります。その場合、ずっと感染を持ち続けなければなりません。全身に波及するリスクも懸念されます。

じゃあ結局抜くのか?!ということですが、抜き方がとてもとても大事になります。
大学病院だから大丈夫だろう。設備がいいから大丈夫だろう。etc

色々判断基準があるかと思いますが、

一番大事なのは切開を小さく、骨を削らない。

大事なのでもう一度言います。

ダメージを最小限に!

外科の手術で大事なのは、できるだけ侵襲を少なくして最短時間で手術するということです。
そうすれば巷でよく聞く親知らずの抜歯で死ぬほど痛かった。。
顔が倍になるくらい腫れた。なんてことはありません。

中々そんなことを見抜ける患者さんはいません。
ですが、勇気を持って『先生。今まで何本くらい親知らず抜いたことありますか?』って聞いてみてください。

ちなみに私は口腔外科に2年間残っておりましたし、その後も年間50~100本くらいは抜いているので少なく見積もっても2,000本くらいでしょうか。

あとは拡大鏡+ライトを使って抜いているかは大きな判断基準です。
裸眼でライトだけで抜いている先生のところで抜くことは残念ながらお勧めできません。
ダメージを最小限にするためには、よく見える状況で抜歯することが前提条件だと考えています。

あと、もう一つ。

一番大事なことがあります。
それは、口腔内の菌数です。

歯周病治療、予防管理がなされている状態で抜くと腫れ痛みが少なく、二次感染を起こす可能性も低くなります。

親知らずが腫れて痛い→次回抜きましょう→抜歯

という順序ですと間違いなく痛みと腫れは最大です。

しかも1ヶ月後に二次感染によって再度腫れる可能性が大いにあります。

正しい順序は
親知らずが腫れて痛い→まず口の中の菌数を減らすためにクリーニングを数回行う→抜歯
です。

これを行う価値は今後の虫歯リスク、歯周病リスクの低減にとどまらず、肺炎、高血圧、糖尿病の予防など全身への好影響にもつながります。

私たち28CliniCではレントゲンでの親知らずの状態、場合によってはCT写真(3次元のレントゲン撮影)、歯周ポケット検査噛み合わせなど総合的にチェックします。
炎症が起きているなら、その原因や原因の除去(抜歯)の方法を詳しく説明いたします。
前述の通り移植に使えるか、残した場合はどの程度のリスクがあるかなども総合的に判断して最良の方法をご提示いたします。

気になる方は是非一度お越しください。

私院長の野上は抜歯専門でも診療しております。
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