削らなくてもいい虫歯があるって知っていますか?

皆さん、こんにちは。
28CliniC 熊谷院 副院長の多田です。

今回は、切削介入するかしないかの判断基準、すなわち削ったほうがいい虫歯と削らなくてもいい虫歯について深掘りしてお話しします。

どの状態の虫歯は治療が必要なのか歯科医師でも意見が分かれるかもしれないので、ご意見がありましたらコメントなどいただけると幸いです。

臨床の場で、患者さんからよく言われることがあります。
「虫歯はありますか?あったらすぐに治療してください!」
私は虫歯の有無についてはハッキリとお答えしますが、切削介入するかどうかは慎重に決定するようにしています。

というのも、治療する必要のない虫歯があるからです。
正確に言えば数十年経っても進行しない可能性のある虫歯があります。
なんでもかんでも「虫歯なら、黒いなら、すぐに削って詰めなきゃダメ!」ではありません。

下の写真をご覧ください。(図1)

図1

40代男性のお口の中(左下の奥歯)の写真です。
奥歯が黒くなっています。(青丸)
確かに初期の虫歯のように見えますが、これは削る必要があるでしょうか?

実は、この初期虫歯は10年以上経過観察していますが、全く進行していません。

ただし、上の写真だけでは治療した方が良いのかどうかは判断できません。
臨床の場では視診が基本となります。

ただ見るだけではありません。
口腔内は唾液で湿潤しているので、エアーをかけてしっかりと乾燥させ、更にルーペやマイクロスコープを使用した拡大視野下でおこなうこと。
それにしっかりとした光源があることも重要です。

また、プラークが堆積していると判断がつかないこともあるので、必要があればプラークを除去してから視診をおこないます。

視診のみで判断がつかない場合はX線診断を加えます。
下のX線写真を見てください。(図2)

図2

青丸で囲っている歯は上の写真と同じ歯です。
歯の最表層(白っぽい層)はエナメル質、その内側(グレーっぽい層)は象牙質といいます。
内側の象牙質はエナメル質と比べて柔らかく虫歯が広がりやすいので表面のエナメル質だけ見て、小さな虫歯でも中の象牙質で広がっているなんてことはよくあります。

ですので、X線写真での診断はとても有効です。
図1の写真では、エナメル質は黒くなって初期の虫歯と思われますが、図2のX線写真では象牙質は正常で、内部で広がっていません。(青丸部)
虫歯だと黒く写ります。

更に、ここでのポイントは、その虫歯が活動性なのか非活動性なのかを探ることです。

知っていましたか?
虫歯には【活動性の虫歯】と【非活動性の虫歯】があります。

活動性の虫歯とは、放っておくと進行する可能性がある虫歯のことです。
それをどのように評価するかは、上記で説明したように歯科医師の視診がとても重要になります。

歯科検診で「虫歯がある」と言われて、歯医者に行ったけど「大丈夫」と言われた経験ってありますか?
歯科検診はあくまでスクリーニング検査なので、暗い口腔内を唾液で湿潤している状態で見てもハッキリ診断できないので、怪しいものは全て「虫歯」となるわけです。
ですので、きちんとした環境下で視診をおこなうと、「虫歯ではない」もしくは「初期の虫歯だが治療の必要はない」となることもあるわけです。

もちろん症状によっては「すぐ治療しましょう」ということもあります。

【活動性の虫歯】と【非活動性の虫歯】についてもう少し詳しくお話しします。

【活動性の虫歯】
プラークコントロールが悪く、プラークが多く残っている場合や虫歯の表面がボソボソしているのは活動性の虫歯と考えられます。
適切な処置が必要ですが、削って詰めるかはまだ決められません。

その後のブラッシング指導や食事指導で改善が見られる場合は非活動性の虫歯になる可能性があるからです。(注:ただし、すでに象牙質深くまで進行している場合は、削って詰める対象になることがほとんどです)

【非活動性の虫歯】
非活動性の虫歯は黒っぽいですが表面が滑沢です。
私の場合ですが、その時点ですぐ「削って治療しましょう」とはなりません。
見た目などの問題もあるので患者さんと話し合って切削介入するか、もしくは気にならない場合は削らないこともあります。

しかし、清掃状態や食習慣が変わってしまうと非活動性の虫歯が活動性の虫歯になることもあるので注意は必要です。

結局のところ、プラークコントロールだけでなく、場合によっては食習慣なども改善もしくは維持していかないと、ずっと削らないで済むとは言い切れないということです。


今回は虫歯を削るかどうかの判断基準についてお話ししました。
次回は治療した歯がまた虫歯になる「二次虫歯」についてお話しします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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