二次虫歯、虫歯を繰り返す理由とその対策

こんにちは。28CliniC 野上歯科医院副院長の多田です。

治療した歯が、また虫歯になった経験はありませんか?
これは二次う蝕(二次虫歯)と呼ばれ、色んな原因があると考えられます。
今回は、その一部をご紹介します。

  1. 歯磨き(プラーク)
  2. 生活習慣(食習慣)
  3. 修復材料の種類
  4. 歯科治療の精度

1、歯磨き(プラーク)

普段の生活の中で、虫歯にならないために皆さんが気を付けていることの代表といえば【歯磨き】でしょう。
ところが、歯ブラシによる歯磨きだけで除去できるプラークは約60%と言われています。
(歯ブラシとブラッシング方法の相違による歯垢除去についての比較 日歯周誌 大18巻1号,13~31)

そこで必要となるのが歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助器具ですよね。
しかし、実際に補助器具を使用している方がどれくらいいらっしゃるのかというと下記の通りです。

これは厚生労働省が平成28年に出した歯科疾患実態調査のデータです。

これによると、一番割合が高い年齢層(55~59歳)の女性で約63%というのが現実。
若年者は特に低くて、2割に届くかどうかという程度。
これは私たち歯科医師の啓蒙活動が足りていないことを表しているでしょう。

歯間ブラシやデンタルフロスはただ単に使用するのではなく「正しく使う」ことが重要です。
使い方に関しては信頼できる歯科医院で歯科衛生士に教わってください。

治療した歯では使用した材料によってもプラークの付着しやすさに差があるので、ブラッシングの質が二次虫歯につながる要因の一つと言えると思います。

②生活習慣(食習慣)

歯磨き以外に、何に気をつければいいでしょう?これが生活習慣(食習慣)です。

以前のブログでVipeholm studyという研究を紹介しました。
1954年に発表されたこの研究によって、食事の甘いものよりも、間食として甘いもの(特に粘着性の高いもの)を摂取すると虫歯になりやすいということがわかりました。
砂糖が虫歯に関係していることが初めて分かった意義のある研究でしたよね。
食事の甘いものより、間食の甘いもので虫歯の発生率が高かったのには、唾液の緩衝能が大きく関係していると思われます。

そして、以前のブログでもお伝えしたように、間食は内容よりも回数が重要でしたよね。

おやつの時間、
「甘いものとジュース」を1日一回と「甘いものと水」を1日何回もだと、いくらジュースを飲んでいないからといっても甘いものを何度も摂取していれば虫歯のリスクは上がります。
甘いものを間食に摂る「回数」を減らすことが重要です。

③修復材料の種類

修復材料とは歯を治療するときに使用する歯科材料のことです。
表面が滑沢であればあるほどプラークは付着しにくくなります。

以下の写真をご覧ください。
虫歯に関する写真ではありませんが、プラークの付着具合がよく分かるので、参考にしてみてください。

両方とも同じ患者さんのお口の中に入っていたインプラントの被せ物で、洗浄するために外した際に写真を撮らせてもらいました。
治療の時期が違うので、インプラントの種類や被せ物の材質も違います。
左はセラミックで右は金属(金合金)です。

一見してお分かりのとおり、右の金属の被せ物にプラークがべったり付着しているのが分かると思います。
それとは対照的に左のセラミックの被せ物には、ほとんどプラークが付着していません。表面が滑沢でプラークが付着しにくいからです。

修復材料に滑沢なものを選べば、プラークは付着しにくいことが分かりましたが更に重要なポイントが次の項目です。

④歯科治療の精度

今回、一番お伝えしたかったのがここです!
というのも、歯科医師の技術(被せ物などを入れる場合は歯科技工士の技術も)がそのまま治療の予後を左右するからです。

③でお伝えしたセラミックで治療したとしても被せ物や詰め物の精度が悪ければ、結局プラークが溜まりやすくなります。

下のX線写真を見てください。
被せ物と自分の歯の境目に大きな段差があることがわかると思います。(赤三角の箇所)
被せ物と歯の境目が合っていないことが分かります。
これでは頑張って磨いていたとしてもプラークは残りやすいです。

一方、下のX線写真はどうでしょう。
形が移行的で、段差もありませんよね?
これなら頑張って磨けばプラークは除去できるでしょう。
(被せ物の精度が良くても、磨かないでいいということはないのです 笑)

こんな患者さんがいらっしゃいました。
「最近治療したばかりの歯がしみて痛い、でも前の歯科医院では何でもないと言われた」

X線写真を撮影すると下のようになっていました。
白く写っているのは金属の詰め物です。
ここまで読んでくださった皆さんならもうお分かりですよね?

そう、詰め物と歯の境目が段差になっていますよね。

少し拡大してみます。
歯の根の形に対して金属部分が内側に入っているのが分かるかと思います。
これでは、磨きにくいですし、プラークも残りやすくなります。

この症例では金属の詰め物を外し、中に残っていた虫歯をきれいに取り除き、さらに応急的に段差が無いように、樹脂を詰めました。
それだけで、その日のうちに痛みは完全に消失しました。

これを見逃したのは歯科医師の責任と言っていいと思います。
しかし、その歯科医師が手を抜いた治療をしたとは思っていません。

患者さんに確認したところ、ルーペなど拡大視野で治療をおこなっていなかったことがわかっています。
拡大視野で見ることと、肉眼で見ることには雲泥の差があります。
また今回治療してあった歯には保険治療の詰め物(銀の詰め物)が入っていました。
保険治療での型取り(専門用語で印象採得(いんしょうさいとく)と言います)は、コストの問題があるため精度の高い材料は使えません。
どうしても型取りの精度は落ちてしまいます。そうすれば自ずと出来上がってくる詰め物の精度も落ちるでしょう。


いかがでしたか?

上記が全てではありませんが、重要な要因になっていると思います。
今回強調した治療の精度の重要性もお分かり頂けたと思います。

敢えてミスをする歯科医師はいません。
しかし、拡大視野でないことや精度の低い材料などの制約があれば、頑張って治療したとしても限界があります。

次回は虫歯の病態と実際の治療について少し深掘りします。
お楽しみに!

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