インプラント埋入のイロハ

院長の野上です。
連載 治療のトリセツver.28CliniCにて、私は口腔外科を担当しています。

今まで
・口腔外科のイロハ
・親知らずの抜歯
・歯の移植

について記してきました。
今回はインプラントについてまとめていきます。

元来インプラントとは、医療器材を人の体に埋め込むことの総称を指します。
歯科で使われる人工の歯根がインプラントの代名詞のような存在になっていますが、人工関節やペースメーカー、豊胸のシリコンなどを全てインプラントと言います。

よって、歯科で埋入するインプラントの正しい呼称は『デンタルインプラント』となります。
(以下 デンタルインプラント=インプラントとさせていただきます。)

インプラントの歴史を見てみましょう。

実は歴史はとても古く、紀元前7世紀のマヤ文明時代に貝殻を歯の根の代わりに埋め込まれれてた人骨が発見されています。
しかし当初は術後の感染の問題や機能不全などのトラブルにより、実用には耐えられる代物ではありませんでした。

安定した治療として確立した現行のインプラントとほぼ同じ形態・素材となったのはごく最近のことです。1950年代にスウェーデンのブローネマルク博士の研究チームによって、チタンと骨が結合(オッセオインテグレーション)することが発見され1960年代から人に対して応用が始まりました。
と、なると安定運用できるようになってからまだわずか60年程度です。
僅かとみるか充分とみるか。

私の中では、ここ最近15年くらいでインプラントの形態や性状、管理体制に関して成熟してきている感覚があります。
歯を失った部分を回復する治療としては、

・取り外し入れ歯
・ブリッジ(欠損部の両サイドの歯を支台として橋渡しにする)
・インプラント

の3つが選択肢に上がります。それぞれの選択肢の利点欠点に関しては多くのクリニックのホームページ/ブログにて大体同じことが書かれていますのでそちらを参考にしていただくとし、今回は割愛します。

では、28CliniCとして何をお伝えするか。

これからインプラント治療をお受けになる方へ

『歯を失った原因が特定できてますか?』

ここがとても重要です。なんで自分の歯を抜かなければならなくなったのでしょうか。
ここをしっかり掘り下げて診査、診断してもらえてますか?その診査診断が疎かですと、インプラントもトラブルを抱える可能性が大いにあります。

歯を失う原因はさまざまです。

・虫歯
・歯周症
・噛み合わせの不調和からくる破折やヒビ
・根の治療の不備  等…

インプラントは虫歯にこそなりませんが歯周病の感染リスクは天然歯の4倍以上あります。天然歯よりも強度を持つインプラントで噛み合せの不具合が生じた場合、対合する歯に甚大なダメージを与える可能性があります。
「歯が無くなったからとりあえずインプラントで回復させよう」という安易な選択をする前に一度よく考えていただきたいと思います。
歯医者の先生に「なんで歯を失ったのですか?インプラントを入れて同じ問題は起きませんか?」と質問してもよいかもしれません。

既にインプラント治療がなされている方へ

『インプラントのメンテナンスはどうやってますか?』
こちらももすごく大事です。(むしろ入れる前よりも入れた後の方が大事かも..)

先程インプラントは虫歯にならないけど歯周病リスクは4倍以上とお伝えしましたが、インプラントのメンテナンスはどのように行うべきでしょうか。
かかりつけのクリニックで、どれ位スキルを持った歯科衛生士(新卒なのかベテランなのか、拡大鏡を使っているか裸眼なのか)の方がどのようなクリーニングをどのくらいの期間で行なっていますか?
歯科医師による定期検診はありますか?

28CliniCではハイリスク(歯周病で歯を失った方)の方は1回/月、ハイリスクでない方でも1回/3~4ヶ月の頻度で歯科衛生士が拡大鏡を使用して隅々までチェックしています。
しかし拡大鏡(6~8倍)や20倍以上の顕微鏡を使用しても、インプラントの埋入深さによっては歯肉内部まで見ることは不可能です。

よって、28CliniCでは、インプラントに装着する被せ物はほとんどの場合で取り外しが可能なシステムを採用しています。
1~2年に1回の頻度で取り外してインプラント内部を洗浄し、被せ物を消毒することによってセットした時と同じように清潔に保てるようにしてあります。

以前は取り外しができない仕組みだったため、削って壊す以外、被せ物を外す方法がありませんでした。
少しの不調では壊して内部を確認する選択をしてくださる患者さんは多くありません。
そのまま経過を見ることになります。
そして実際にトラブルが起きてから被せ物を壊して外したとき、内部のインプラント本体にまでダメージが及んでしまっているケースも多々ありました。
その場合、治療に追加のお金も時間も必要となります。

インプラント入れる前も入れた後も絶対に見落としてはいけないポイントがあります。
・術前の歯周病・噛み合わせの診断が的確に行われているか。
・術後の管理体制が整っているか。

この二つだけは見落とすことなくインプラント治療をお受けいただきたいと存じます。

参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/58/4/58_236/_html/-char/ja

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